僕は実際に即身仏を見たことがあります。「弘智法印 宥貞」というミイラです。

その時の印象がとても強く残っていて「即身仏になるにはどうすればいいの?」「成功するのってほんの一握りだろうな」と感じたものです。

すごく興味を引かれたので即身仏について、修行の方法や失敗する原因などを調査しましたので、その内容をシェアさせて頂きますね。

画像もたくさんご紹介しますので、ぜひ最後までご覧になってくださいね。


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即身仏とは?

なんとなく聞き覚えるのある即身仏とはいったい何ものなのか紹介していきます。

即身仏とは何?

即身仏とは、簡単にいうと「ミイラ化した僧侶」を指します。

ミイラと聞くとRPGに登場するゾンビを思い浮かべるかもしれませんが、即身仏はゲームに登場するミイラとは別物です。

即身仏の場合はお坊さんが人々を助けるために、厳しい修行を行った結果ミイラになります。

人々の救済のために即身仏になるので、ゲームに登場するただ襲い来るだけのミイラとは生い立ちが異なるとわかるでしょう。

そんな即身仏は11世紀から行われていて、最初に即身仏になった人物は諸説ありますが空海と言われています。

空海と言えば真言宗の開祖として有名な人物ですよね。

空海はある日、禁欲的な生活を行うことで法力が高まり、さらなる悟りが開けると考えました。

そこで厳しい修行を行い、最終的に即身仏になったと言われています。

空海が即身仏になってからさまざまな人物が即身仏になるため修業しました。

しかし、1878年に明治天皇が即身仏による自殺を禁止し、即身仏の時代は終わりを迎えます。

ちなみに、最後の即身仏は鉄竜海上人(てつりゅうかいしょうにん)と言われていて、現在でも山形県の南岳寺に祀られています。

このように即身仏には歴史がありますが、かつての僧侶たちはいったいどのような修行を行っていたのでしょうか。


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即身仏になるために

即身仏になるためには、1,000日ごとに定められた3つの修業をこなさなければいけません。

3つの修業

  1. 最初の1,000日で体脂肪を落とす
  2. 次の1,000日で木の皮と根だけを食べて体を作っていく
  3. 最後の1,000日で石室に生き埋めにされてミイラ化するのを待つ

即身仏になるためには、まず食生活を徹底的に変えなければいけません。

たとえば、我々が食している肉や魚、米などは一切食べられず、木の実や種、果物など低カロリーの食べ物しか口にできません。

厳しい食生活に加え、山ごもりして修行する必要もあります。

食生活の改善と山ごもりによる修行で、僧侶の体は徐々にミイラ化していく仕組みです。

しかし、そこからさらに食生活を変更して、最後の方は木の皮と根だけしか食べられません。

ここまで厳しい食生活にするのは 脂肪や筋肉、水分を極力そぎ落とすためです。

脂肪や筋肉があるとウジ虫がわいたり、ハエが遺体に散乱したりするリスクがあります。

体に虫が付くと理想的な即身仏にはなれません。

骨と皮だけになった僧侶は、石室に入って即身仏になる日を待つことになります。

即身仏の修行はまさに苦行ですね。

生きたままにして死ぬという地獄のような修業は話を聞くだけでもゾっとします。


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即身仏に失敗するとどうなるの?

即身仏に失敗すると3つの末路を迎えると言われています。

  • 処刑される
  • 白骨化する
  • 無縁仏で処分される
  • 回収されずに忘れ去られる

ご紹介したように即身仏の修行は大変厳しいです。

並大抵の者でなければ耐えられないので多くの僧侶が失敗しています。

その証拠に即身仏は11世紀から19世紀という長期にかけて行われてきましたが、現存する即身仏の数は17体ほどです。

過去に何人の僧侶が即身仏になろうとしたのかは不明ですが、多くの僧侶が失敗しています。

では即身仏に失敗するとたどる4つの末路についてそれぞれ詳しく解説していきます。

処刑される

即身仏の修業はあまりに過酷なので、修行から逃げ出して処刑されることもありました。

即身仏になるためには3,000日にわたって地獄のような修業を行う必要があるので、当然の結果と言えるでしょう。

しかし修行に逃げたからといって即処刑というのは、さすがに厳しすぎる気もしますね。

ちなみに即身仏を目指す僧侶たちは、7年もの間山を1日で30km行脚するという修行を行っていましたが、そのときに短剣を持参していました。

なぜ短剣を持参しているのかというと、修行でくじけたときに自害するためです。

即身仏の修行に耐え切れない者には死を」という強い信念がうかがえます。

僧侶の修行は厳しいイメージがありますが、即身仏の修行は別格ですね。

白骨化する

即身仏の修行を終えた僧侶たちは最終的に石室に入りますが、ミイラ化せずに白骨化するケースもたくさんありました。

日本は湿度が高い気候なので、そもそもミイラを作ることに向いていません。

たとえば、ミイラがいる場所と聞くと砂漠を思い浮かべると思いますが、砂漠の場合はほとんど空気に水が含まれていないのでミイラになりやすいです。

しかし、日本の場合は多湿なので僧侶の遺体が土の中で分解されて白骨化してしまいます。

そのうえ、日本の土壌は細菌が繁殖しやすいので、少しでも脂肪や体内の水分が残っていると腐敗して、ミイラづくりに失敗します。

即身仏の中には一部が白骨化しているものもあるほど、日本で完璧な即身仏になるのは難しいです。

日本に現存する即身仏は17体ほどですが、その17体は奇跡的なことを成し遂げたと言えるでしょう。


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無縁仏で処分される

石室に閉じ込められた即身仏を掘り起こした結果、即身仏になっていなければそのまま無縁仏として供養されます。

無縁仏とはお葬式や供養をする親族や縁者がいなくなった故人やお墓のことです。

即身仏の修行は約3年3か月後にも及ぶので、どの僧侶かわからなくなるケースもあります。

掘り起こすことは即身仏の修行をする僧侶の弟子たちに任されることが多いですが、埋めた場所がわからなくなることもありました。

埋めた場所が不明な場合でも思い当たるところを掘り起こして即身仏を発見しますが、その即身仏が自分たちの師匠にあたるのか不明ですよね。

結果的に無縁仏として供養されるわけです。

回収されずに忘れ去られる

即身仏の中には回収されることなく石室に残されることもあります。

非常に悲しいケースですが、たとえば以下のケースに当てはまる場合は忘れ去られる可能性が高いです。

  • 周囲との関係性が良いとは言えなかった
  • 尊敬されるような僧侶ではなかった

こういった周囲の人間関係によっては、即身仏の修行をしていることを忘れられてしまいます。

即身仏が失敗するケースを見ると、さまざまな障害を乗り越えて誕生するものだとわかりますね。

即身仏が成功する過程を見ると崇め奉られている理由もわかります。


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即身仏に失敗する原因

即身仏が失敗する原因はこちらです。

  • 修行が過酷を極めるから耐え切れない
  • 生前に人間関係を築けていなかった
  • 明治時代の法律による障害

では3つの原因を詳しく紹介していきます。

修行が過酷を極めるから耐え切れない

即身仏になるためには、過酷な修行を耐えきることが前提です。

厳しい断食や山を毎日30km歩くという過酷を極める修行に耐える必要があります。

しかし、修行が厳しすぎるので逃げ出す僧侶も珍しくありません。

話を聞くだけで即身仏の修行は厳しいものだとわかるので、逃げたくなる気持ちもわかります。

即身仏になるためには、誰にも負けないような心と信仰心が必要になることがわかりますね。

生前に人間関係を築けていなかった

即身仏のやっかいなところはひとりで完結しない点です。

石室に入るまでは自分ひとりの力で行うこともできますが、最後に掘り起こしてもらう必要があります。

掘り起こして初めて即身仏になると言っても過言ではないので、誰に掘り起こすことを頼むかも重要なポイントです。

仮に信頼関係の薄い人に頼んでも、掘り起こしてもらえない可能性もあります。

また、年齢を重ねている人や体調が悪い人に頼んでも、掘り起こす時期には亡くなっているかもしれません。

このように、最後の掘り起こしの作業を誰に任せるのかは非常に重要です。

信頼できる人がいなければ即身仏も完成しないので、日ごろから僧侶として尊敬されるような活動をしておく必要もあります。

明治時代の法律による障害

明治時代に突入すると、即身仏になろうとした僧侶の石室を開封されることが禁止されました。

仮に石室に入っても、掘り起こすこと自体が法律に違反するので、誰も確認できません。

明治時代に誕生した法律も関係して、即身仏が失敗するケースもたくさんありました。

ただ、厳しい監視の目をかいくぐって2体の即身仏が成功した事例もあります。

即身仏は偉大なものなので、やはり法律で禁止されたからといって、素直に従うのは難しかったようですね。

即身仏が失敗するケースは個人的な問題だけではないのも特徴です。

個人的な問題はもちろん、外部要因もクリアして初めて即身仏が誕生するので、奇跡的なものとして扱われているのでしょう。


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即身仏に失敗しないために実際に行われていたこと

即身仏が失敗しないために以下のことが行われていました。

  • 徹底した食事制限
  • 漆の液体を飲む
  • 掘り起こしに関する遺言を残す

では3つの対処法をそれぞれ見ていきましょう。

徹底した食事制限

即身仏になろうとする僧侶たちは、米や麦を完全に断ち、木の実や根だけを食べる修行をしていました。

木の実や根だけを食べることで、体内の脂肪や水分は完全に取り除かれます。

体内に脂肪や水分があると白骨化したり、最近にむしばまれたりするので、相当厳しい食事制限を行っていたようです。

漆の液体を飲む

即身仏を目指す僧侶たちは、ときに漆の液体を飲んでいました。

漆は毒性があるので本来口にしてはいけませんが、漆を少量飲むことで嘔吐します。

嘔吐することによって体内の水分も吐き出せるので、即身仏に適した体を目指すためには効果的な手法でした。

また、漆は防腐作用もあるので、死体が腐らないようにするときにも飲んでいたと言われています。

掘り起こしに関する遺言を残す

即身仏になる僧侶は最後に、弟子たちへ約3年3か月後に掘り起こすように記した遺言を残していました。

遺言があることによって、弟子たちは即身仏が完成するその日まで待ち、遺言に従って僧侶を掘り起こせます。

師匠と弟子の厚い信頼があって成立するものだとわかりますね。

即身仏になるべくさまざまな対処法が取られていましたが、それでもほとんどのケースで失敗しています。

いかに対策を講じでも即身仏になれないところが、奇跡的と言われるゆえんですね。


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以上、即身仏になるための修行や失敗する原因についてご紹介してきました。

現代においては考えられない修行ですが、当時は僧侶にとって最高峰の地位だったのかもしれませんね。